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「はい。それではこちら証明書でございます。手続きはこれで終了となります、ありがとうございましたっ」  もう大分前に昼休みのベルが鳴っていたなあと思いながら最後の客を帰して、俺はやっと自分の机に突っ伏した。シャツに皺が寄ると後が大変だとは思うけど、構っていられない。 「つっかれた……」 「お前、体力ねえな。そんなんじゃやってけねーぞ?」  どうやら自分でお茶をいれてくれたらしいジンさんが――よく考えたらそれって当然だよな?――皮肉げに笑って煙草に火をつける。  いつも通り行儀悪く棚に腰かけてがらりと窓を開ける姿は、俺と違って余裕綽々だ。 「庁内は禁煙……」 「知ってる。ちょっと休憩行って来っから」  俺がとがめるのを遮って、ジンさんは身軽に窓枠を乗り越える。  一瞬だけ時が止まったように黒い短髪とシャツの襟がふわりと浮かび、吹き込んだ風に舞い上がりそうになった書類を俺があわてておさえ込む間にその姿は消えていた。  ジンさんと居ると、ここが4階だってことをときどき忘れそうになる。
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