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 簡単な重力制御だってジンさんは言うけど、それが等級で言ったら準1級か正1級の魔術だってことくらい、俺だって知ってるわけで。魔術士としての力量で言えば、ジンさんは実は結構凄い人、らしい。  らしいけど、日常茶飯事なんで今更驚かないし、本人のノリが軽すぎてイマイチ感動がない。  窓から入ってくる初夏の風を心地よく感じながら、俺は買ってきたパンをかじる。  役所の横には広い公園があるから、景色だけは爽やかだ。 「もう夏だよなぁ」  そう。夏だ。  そして、秋になると登用試験がある。役所の正職員になるためには、当然受けなければならない試験だ。思わずため息がこぼれる。 「……無理だ」  現状、どう考えても無理だった。  そりゃあここは役所だし、所詮俺は臨時職員だし、休日はまぁ保障されている。  だけど、平日は自分の仕事で手一杯。客の対応が長引けば残業もまぬがれない上、まともな基礎教育さえ受けてない俺が登用試験に合格するには、絶対的に時間が足りない。
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