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「憂鬱だ……」  ぼやきながら、俺はとりあえず机上通信機を立ち上げて、気象庁のマナ観測局から届くデータの処理をはじめた。  通常業務をちょっとでも減らしておかないと、家に帰って日課の試験勉強を始めたかと思えば、あっという間に午前様だ。  来週、隣国ゼンロッツからの使節団を歓迎する催しがあるとかで、そのための魔術使用申請客が昨日からやたらと多い。  ゼンロッツは近隣諸国一の魔術大国だから、さぞ派手にマナが乱舞する祭になることだろう。  ま、魔術使用をきちんと事前申請してくれるなんて、相当良心的なお客様なんだけど。  でも、ただでさえ人手が足りないっていうのに、特係(とっか)の手伝いでベテラン職員が2人も借り出されてしまって、うちの係はほとんど俺とジンさんだけで回すはめになっていた。  最近は家に帰ったら疲れて倒れて朝まで寝るだけ、勉強なんてはかどるはずもない。 ≪ピピピピピピ≫ 「はい、こちら一般係」 『ジン、居る?』  通信音に、反射で受話器を取り上げると、すかさず鋭い声。  警察局のカリンさんからだった。
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