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「居ます。呼んで来ますんで――」
『待って。テアルよね? とりあえず聞いて。今ね、違法改造の宝石蜂が出たって通報があったんだけど、そっちで処理できるかな』
質問系なのに、有無を言わせぬ響きの高い声。受話器越しなのに、威圧感がある。
「ホーセキバチ……あぁ、宝石蜂ですか。えっと、危機レベルは」
『レベル3。そんなに高くない。でも一般人には脅威だから、早めに処理したいんだけど。うちは今ほら、使節団の警護に人が回っちゃってて。魔術改造生物の対処出来そうなのが居ないの』
「あー、じゃあちょっと相談してみま――」
「代わったけど。なんだソレ。ちょっと人員管理甘いんじゃねえの?」
俺が言い切る前に、いつの間に戻ってきたんだか、ジンさんが受話器を奪い取っていた。
見上げると、不機嫌な声に不適な笑い。ああ、顔と言葉が合ってねえ。交じりっけのない黒い目が輝いている。めっちゃ楽しそう、この人。どうしよう。
受話器の向こうからカリンさんの謝る声がかすかに聞こえてくる。
でも、カリンさんの『ごめんなさい』もすでに笑みを含んでいた。
この時点で、この依頼、うちで受けることが決定した。
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