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「第一陣、全滅しました!」
通信機から焦った管制室員の声が響く。混じり、聞こえてくるのは銃声と爆音。先程から敵機撃破の報が一切こない。となればこちらが一方的に殺られていることになるのか。
「アルグさん、これは一体…」
「分からんな…だが、どうやら殺られたのはMTだけじゃないみたいだ…」
「え?」
「さっきからグレネードの発射音、着弾音が全く聞こえん。おそらくこちらの砲台も全滅している…。爆撃機も生き残っているかどうか…」
「そんな…敵はMT数機だけじゃなかったんですか!?」
こちらの戦力は高性能MT二個小隊に加え、グレネード砲台数機、爆撃機数機であった。単純な戦力差がある上に、何より場所は自分達のテリトリーだ。確実に有利なはずであった。
「何が…」
冷汗が吹き出る。不安という名のドス黒い異物が喉に突っ掛かかり、思わず唾を飲み込んだ。
「鴉…」
ポツリとアルグさんが呟く。
「カラス…?」
「若造、お前のような奴でも聞いたことはあるだろう。鴉のように何者にも囚われぬ、彼等傭兵達のことを」
「まさか…」
ギュッと操縦悍を握り締める左手の薬指には、小さな指輪が白銀に輝いていた。
「レイ…ヴン…」
それは、死と破壊を運ぶ、闇の無法者の名。
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