5人が本棚に入れています
本棚に追加
一瞬。
ふわりと柔らかな紅茶の香り・・・?
いつも祖父がゆっくり紅茶をを飲みながら、座っていたロッキングチェアが揺れていた。
ぎしぎしと。
とても自然に。
風が揺らしたように。
硝子扉に向かう僕は、優しい祖父の暖かさを・・・感じていた。
心地よくて、いつまでも浸っていたい・・・。
でも。
祖父の残像に涙を流す僕は。
思い出にいつのまにか浸っていた。初めて、ここに来たこと。
祖父の入れるアイスティー・・・。
もう・・・過去の事なのに。
(大丈夫さ・・お前なら。)
ああ・・・じいちゃん。
その声に押されるように、テラスに続く硝子扉を開け放った。
びゅぅぅと。
夏にらしい潮風が、部屋中を駆け巡る。
ふわりと、祖父が頭を撫でてテラスから外に・・・踏み出していった気がした。
「じぃちゃん・・・。待っててくれたのか・・・。」
僕はキッチンでお湯を沸かし、祖父のようにアイスティーをいれると、サマーベッドをテラスに持ち出した。
テラスから見渡す景色は、祖父と見た景色と変わることなく。
自分で入れたアイスティーは少し苦い味がしたが。
さんさんと降り注ぐ太陽と、心地よい潮風に吹かれ。
僕は、祖父の思いでと対話して夕日を迎えた。
~終~
最初のコメントを投稿しよう!