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サイカイヲイダイタソラ
彼の死で戦況は変わる事はなかった。
彼の骨は故郷の土を踏む事なく南の島から二度と戻る事のない旅路についた。
残された遺族には骨壷の中に白い砂を詰めたものが送られたと聞く。
同じ部隊に配属された幾人もの隊員が同じように命を散らすのを胸に刻み「今、生きている日数」指折り数えた。
そしてそんな中、次はとうとう自分の番が来てしまった。
いつしか隣で泣いていた声も聞こえなくなり、大切な任務に備え休む事にした。
次の日は暑いながらも澄み切った青空が広がった。
そしてまた幾日が過ぎて出陣の式も終わり、自分の乗る機にて出番を待つ。
手にはあの日の桜。
「皮肉にもあの時と同じ日本晴れか。」
不思議なもので何故かこの時、笑いたい衝動にかられた。
どうやら彼が笑わせているのだと思い、素直に笑った。
笑い声が大きかったのか教官に注意を受けた。
「まぁこれもいいさ。」
次々と飛び立つ戦闘機。
未練は既に無い。
そして自分の番。
「さぁ宴の続きをしに行きましょうか。」
胸に入れた桜の札を持って、僕は青空に飛び出した。
哀しい気持ちでは無く、再会を楽しむように・・・
あの日の彼と同じ気持ちで。
あの日の宴の続きをしに・・・
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