涙の遺書

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「行ってきます。」 少年が玄関から声を掛ける。 「行ってらっしゃい。」 ドアの閉じる音を聞いた後、軽くため息をつく。 最近、息子に元気がないように感じるのは気のせいか… 休みの日にも出掛けている様子がない。 「あっ、もうこんな時間!」 時計に目をやると、仕事に出る時間が迫っていた。 …今日、帰ったら話をしてみよう。 ドアに鍵をかけながら、話をどう切り出そうか考えてる。 夫が亡くなった後、頑張ってこれたのは、あの子の存在があったからだ。 息子の通う中学校に視線を向けると、始業のチャイムが聞こえてきた。
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