涙の遺書

6/7
前へ
/254ページ
次へ
息子の大輔は中学三年生になったばかりだ。 親としては、やはり良い高校に入ってもらいたいが、特に強要はしないつもりでいた。 元気で居てくれるのが一番。 幼いころ、しょっちゅう熱を出しては自分を慌てさせた大輔のことを思い出して微笑する。 「早く帰って夕食の支度しなくちゃ!」 腕時計を見て足を早める。 家が見える距離まできたときに、息子の部屋の電気が消えていることに気がついた。 …昨夜夜更かししたみたいだから、もう寝ちゃってるのかな? 夏が近づき日が長くなってきたとはいえ、既に辺りは夕闇に包まれていた。 特に疑問も持たず、玄関の鍵を開けて家に入る。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

655人が本棚に入れています
本棚に追加