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声
少女は枯葉舞う秋の公園に歩みを進めた。
そこには自分と同じ形をした人間達が一時の時間を寄り添うように過ごしていた。
そしてどこからか聞こえてくる暖かみを帯びた声・・・
「さっき書いてたのは何。日記?」
いつも聞いているハズの声。しかし今の彼の声とはどこかが違う。
「手記よ。今日の事を書こうと思ってね。」
今までに聞いた事のない声。いや、違う。私はこの声をどこかで聞いた事がある。
「手記。日記じゃなくて?」
「日記は毎日書くものよ。手記は日記と違って毎日書かなくていいものなの。」
「へえ、そうなんだ。僕も書く様にしてみようかな?」
「仕事でそれどころじゃないんじゃない?」
「仕事?あっそうだ。君に報告したいとてもすごいニュースがあるんだ。」
男は何かを思い出したように急に声色が明るくなった。
「どうしたのいきなり。」
「来年から僕の新しく提案していた新型のシステムが採用になったんだ。」
「本当に、すごいじゃない。」
二人の声にギャップができたが、一瞬で声の足並みが揃った。
「僕の夢は画期的な新しいアンドロイドを作るのが夢なんだ。そしてその第1歩は感情システムを使わないで目的だけを完遂するAIを作る。もしこれが実現すれば、この間起きた「アンドロイド占拠事件」みたいな事はおきなくてすむんだ。それでこのプロジェクトを可能にする要素は・・・
あっ、ごめん。また仕事の話ばかりして・・・」
「気にしないで。」
「ごめん。いつもいつも仕事の事で。」
「いまさらなに言ってるのよ。いつものことでしょ。」
女の声はどこか不満を模したような声になりその声で男の声も不安が過る。
「ごめん・・・」
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