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今の時間帯は夕暮れ時。ほとんどの人は家路を急いでいる。立ち並ぶ家々は明かりを灯して薄暗くなる景色を照らし、屋台は小さな光を灯していた。
ザアッと風が吹く音がし、木々が微かに揺れて葉が舞う。今は季節で言うと秋の終わりだ。しかしまだ冬に入ってはいない。少し寒さを感じる程度である。
家路へ急ぐ人々が行き交う中、道の真ん中に一人の青年が佇んでいた。見た目は十七歳ぐらいの青年。しかし髪と目の色が異容だった。
――混じり気のない銀色。
短いながらも風で揺れる青年の髪は、光が微かに反射して魅せていた。
ただでさえ道の真ん中で佇んでいる青年は目立つのだが、その青年は人々の目に映ってはいなかった。誰しもがそこには「何もない」という様子で、操られるように青年が立っている場所から避け通っていく。
その青年は空をただひたすら見つめていた。
「近い。」
青年が小さく呟いたと同時に、一陣の風がその場に吹き荒れ、風が止んだ後にはその場所から青年の姿はいつの間にか消えていた。
そして青年のかわりに、まだ降らないはずの一片の雪が現れ―――消えた。
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