184人が本棚に入れています
本棚に追加
青々とした木々が生い茂る森を、一人の少女が駆けていた。
映えるような金色の髪を風になびかせ、特徴的な紅の瞳はただ前を見つめ、常人とは思えぬ速さで生い茂る木々の間を縫うように駆け抜ける。
――全ては、後方より迫りくる脅威から逃げる為に。
彼女の後ろに迫るのは、千年の時を生きる負の遺産、意思持たぬ機械人形アーティファクト。
全身を覆う装甲は、木々の合間より差し込む木漏れ日に照らされ不気味に黒光りし、装甲の隙間から除く一つ目はただ、前を行く目標だけを見ていた。
人の何倍はあろうかという剛腕を無造作に振り払い、木々をなぎ倒しながら、目標を追う。
「ちっ、しつこいな……」
少女はちらりと後ろを振り返り、後方よりなおも迫りくるアーティファクトを見て短く舌打ちした。
両者のスピードは互角。
ならば、雌雄を決するのは、各々の体力だ。
かたや、速さこそ常軌を逸しているが人間。
かたや、目的を遂行するまで動き続ける機械人形。
何らかの策をうたなければ自分に勝ち目はない。
少女はそう思い、急ぎ思考を巡らせる。
何か、何かないのか――?
辺りを横目で見ながら、この状況を打開出来るものを探すが、非情にも見つからない。
最初のコメントを投稿しよう!