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数分ぐらい走っただろうか、突然視界が開け、まばゆい日の光が少女の目に飛び込んできた。
それと同時に少女は、慌てて足を止め、その場に踏み留まる。
そして、目の前に広がる光景に絶句する。
見渡す限りの森林。目を見張る壮大な光景。
足元には断崖絶壁。泣きたくなるような光景。
背後より迫るのは、ある意味崖より恐いもの。
ごくり、と唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。心臓がやけに早く高鳴っている。
やばい――!
絶体絶命を絵に書いたような状況に、少女は焦りを隠せない。
背後から鳴り響く、木々をなぎ倒す音がさらに焦燥をかきたてる。
「私は、まだ死ぬわけにはいかない」
鳴り響く轟音の中、自分に言い聞かせるようにして、少女は呟いた。
その刹那――森が弾けた。
木々が、土が、宙を舞い、土ぼこりを突き破るようにして中から現れたのは、黒い装甲に身を包んだ、恐怖そのもの。
それは、少女の何倍はあろうかという体駆を生かし、覆い被さるようにして目標に襲いかかった。
次の瞬間、奇妙な感覚が少女を襲った。
自分の中に眠る何かが目覚めるような
自分が自分でなくなってしまいそうな感覚。
そんな感覚が沸々と込み上げ、少女の意識はそこで途切れた――。
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