プロローグ

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第一レジスタンス・レーンジャーズ特殊突撃ユニット・レッドワンのジョエル・ベンソン中尉は、岩だらけの分水線の頂上までの最後の二、三メートルをよじ登った。昨夜は雪が降り、彼と四人のメンバーは体の芯まで凍えていた。ロサンゼルスでは、こんな寒さを経験したことは一度もない。山中ですら、これほど寒くはなかった。まったく、今日は七月一日だというのに。 彼は古いシュタイナー軍用高性能双眼鏡を目に当て、高速道路と昔の州間道路二五号線から伸びている広い道路を調べた。それはどんどん急勾配になる生きた岩をジグザグに鋭く切っていく。 人間が造ったものは、最近はめったに見られなくなったな。ベンソンは苦々しい気持ちで思った。橋は造られないし、新しいダムも、空港も、旅客船も建設されない。あるのは破壊だけだ。死と腐敗のにおいが鼻孔の奥に居座り、喉の裏にはりついている。それは至るところにあった。
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