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「ったく……人探しなら探偵にやらせとけよなー」
手漕ぎボートでゆっくりとオレは島に近付いていく。
辺りは暗いしバレる事は無いだろう。多分。
「ここにボート置いて行くか」
陸にボートが当たる。多少派手な音が鳴ったが、別にバレた所で見つからなければいい。
「さーってっと……」
腰に巻き付けたポシェットから10cmぐらいの細長い紙を取り出す。この島の地図だ。
「山があそこ…で、灯台があの辺。ココだな」
口に咥えたマーカーで○を付ける。海岸線の端。救助すべき人物は現在地の反対側。
「ちっ。めんどい所からのスタートになっちまったな……」
オレは迷彩柄のジャンパーの左内ポケットをまさぐる。
そして煙草を取り出して火を付けた。
「ふぃー…………ゲホッ!ゲホッ!」
やっぱりオレには煙草は向いてないんだな……こりゃ。
煙は吸わずに火の微かな灯りで一枚の写真を見た。
「見た限りはなかなかの美人なのにな」
オレがこんな美女を救助するって事はそれなりの事情があるに違いない。
それぐらい自分でも分かっている。
「……行くか」
煙草の吸い殻を海に放り投げ、オレは歩き出した。
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