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「それで、ボートでここまで来たのか」
一人はソファにもたれかかり、もう一人は備え付けのキッチンで湯を沸かしている。
「あぁ」
「さぞかし疲れただろう?」
広い部屋だ。学校の教室に絨毯を敷き詰めて、真ん中に二つの緑のソファとガラスのテーブルを置けばこんなもんだろう。
「いや、こんなのは朝飯前だ。追われる時はもっと疲れる」
「そうか…………今そっちに行く」
二つのマグカップを持ちホルスターからはみ出した銃身を揺らしながら兵士が反対側のソファに座り込んだ。
「話を戻す。私達は蒼の勢力でありながら朱の勢力を壊滅させるべく編成された部隊だ。いきなりで悪いが人手が足りない」
マグカップから立ち上ぼる匂いは喫茶店をイメージさせるコーヒーの匂い。
「そうだな……利害一致させるなら、オレが壊滅させたとしても待機はしない。そのまま人質を救助しにいく」
マグカップに口を付けていたヴァンが顔を上げた。
「一人で行くつもりか!?」
オレは動じずにマグカップを手に取り、口を付けた。
「……オレが死んで朱チームも壊滅したらあんたは万々歳だ。安全地帯から崩壊を見てればいいさ」
「無謀だと思わないのか…?」
マグカップをテーブルに置いてヴァンが身を乗り出して来る。
「思わないね」
さっさとコーヒーを飲み干し部屋のドアノブに手をかけた。
「30分で用意してくれよ。さっさと片付けたいんだ」
そう言ってオレは扉を閉めた。
「久しぶりに腕が疼く」
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