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いつもの様に俺達は音楽室にいた。俺は今日の事を聞いた。
『何で本当の事を言わなかったんだ?』
「こんな根暗だよ?知られたくなかったの。ごめんなさい」
『いいよ。本当の名前分かったし。それより恵、引っ越すのか?』
「何で?」
『いや…』
それ以上は聞けなかった。いや、聞くのが怖かった。
もし引っ越すと言われれば…。
そんな俺の心を知らず彼女は笑っている。それからいつもの通り時間は過ぎていった。
俺は彼女の前では本当の俺を見せられるような気がした。
何年振りかに人前でピアノを弾いた。彼女は何も言わずただ見つめているだけだった。弾き終わると彼女が一言…。
「風のようね」
『風』初めて言われた言葉だった。大抵、「さずが」とか「似ている」そんな言葉ばかりだった。
ただ嬉しかった。
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