28人が本棚に入れています
本棚に追加
第2章:ピアノ~1~
あいつは別れる事が分かっていた様だった。何も言わず1回頷いただけだった。普通クラスと進学クラスは校舎が違うから普通クラスのあいつとはあれから会う事も無くなった。
別れてから俺は放課後音楽室に行くのが習慣になっている。彼女の歌声を聞いてそれから話をする。歌うのは俺が知っている洋楽を中心に歌ってくれる。
たまにクラシックの歌劇も歌う。彼女の歌声は凄かった。
『凄いな。迫力があるのに繊細な感じ…』
「ありがとう。私の歌を聞いているだけで楽しい?」
『楽しい。どんな有名な歌手よりも迫力があって惹き付けられる』
「ありがとう」
いつも俺はこう言うのだが彼女は毎回照れながら「ありがとう」と言う。俺はこの表情が堪らなく好きになった。
しかし…彼女は名前以外は何も教えてくれなかった。俺はいつも教室を見渡しているのだが彼女を見つけられないでいた。
もっと彼女の事を知りたい…。俺の気持ちはそれが支配している。
最初のコメントを投稿しよう!