彼は憎悪に絶対服従

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「……なんで離婚するの?」 俺には、この言葉を出すのに精一杯だった。正直分かっていてもショックが強くて、余りにも実感が湧かない。 簡単に、離婚と言うものは出来るんだ、この時の俺は思っていた。 「……分からないの、理由が」 「えっ?」 「だって…だって……私達、あんなに仲良かったのに……なのにお父さんが……いきなり」 どうやら、この離婚は、父から始まっていて、母の方は、離婚なんて予想外だったみたいだ。 「何でなのっ……何でなのっ……何でいきなり離婚なのっ……」 それから母は、俺の前で顔を覆って泣き叫んだ。 何故、母が、泣かなきゃならないんだろうか。疑問だった。あの父じゃ無くて、母が……。 俺は母の惨めな姿を見ながら、過去を回想してみた。 俺逹は、いつも月一で映画を見に行っていたな。二人共映画が好きで、意見が合わない時は二人の好みの映画、両方を見た事もあった。そんな二人の影響で俺も映画が好きなった。 年に一度は、旅行にも行ったな。何時かは決まってなくて、いつも父の気まぐれでいきなり始まる旅行。 計画とかスケジュールとか、そんな事は全く皆無で車を飛ばして行く旅行は、疲れたけれど楽しかったのを今でも思い出せる。 飯を食うときは、座卓を三人で囲んで、オカズの取り合いをしていた。何だかんだで、俺がいつも頂いちゃうんだったな。 父は無口だけど、結構気さくな人で、一緒にゲームとかやった。母は口うるさかった。でも、凄く優しい人だ。 そんな凸凹コンビの夫婦は、何だかんだで上手くいっていたんのに、一体何時からこんな事になったんだろう。
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