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いつもはフェンス越しでしか見えない景色なのにいまは金網がない。
それだけでやけにすっきりと辺りが見えるものだ。
眼下に見えるグランドは小さく部活をしている野球部の人たちの姿はなお小さい。
…そして…。
遠かった空が近い。
手を伸ばしたくなるほど。
夕方の赤く染まる空がどこまでも広くて、遮るものがなくて目を奪われてしまう。
「ちまちまちゃん手を放しても大丈夫ですよ。俺、しっかり支えてますから。」
私の心を読んだかのように穏やかな声に私はおっとりくんを見下ろした。
肩に私を乗せながら、おっとりくんはまったく揺らぐことはなく、その癒し系の笑顔は曇らない。
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