―第1章―

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眩しい・・・・・。 太陽の光がアスファルトに反射し、視界を遮る。 ジリジリと照りつけ、地球上の全てを溶かしてしまいそうな太陽の熱を体中に感じながら、五条真広(ごじょうまひろ)は呼び鈴を鳴らした。 暑さで手が汗ばみ、ベルを押すのが中途半端であったにも関わらず、ベルは高級感を窺(うかが)わせる深みある音を響かせた。 『琴音(ことね)、まぁ君がいらしてるわよ。支度は出来たの?』 『あ、はーい。あと着替えるだけだから、すぐ行けるわ、お母様。』 隣に住む雫石琴音(しずくいしことね)は下着姿のまま二階の窓から下を覗いて敬礼し、真広だけに聞こえるよう小さな声でふざけながら言った。 『まぁ君、今行くから待っててね。』 『ちょっと!やめて!恥ずかしいでしょ。』 真広は頬を赤く染め、胸を隠すよう懇願した。琴音は舌を出し、満面の笑みと投げキスを返してきた。 ダダダダダダダ・・・・・ッ 雫石家から階段を下りる音が聞こえる。真広は頭を抱えていた。 (もぉ、あんな行動誰かに見られたらおかしくなったと思われて病院送りにされちゃうよ。) 真広と琴音が住む麻布十番の住宅街は一軒一軒の敷地が広く、中でも五条家と雫石家は一際(ひときわ)目立ち、その壮麗(そうれい)さと優美さに誰もが目を奪われる程であった。 『お待たせー真広ぉ!まぁそんな照れるなって(笑)あはは、さてー行くか。』 『ちょっと、女の子なんだからその言葉遣いと態度やめてよ。』 『あぁ、そうだね。ごめん、やっぱ疲れるんだよな、ずっと丁寧な言葉使うのは。』 琴音は笑いながら答えていたが、表情がほんの一瞬変化した。 それに気づいた真広は、自分の失言に罪悪感を感じた。 『そうだよね、ごめんなさい。慣れないよね。もう半年も経つけれど、自分自身も話し方治せてないもんね。』 『だよなぁー。』 琴音は学校の指定鞄を両手に持ち、両腕を頭の後ろで組みながら歯並びの良い真っ白な歯を真広に向けて笑った。 『まぁ仕方ない。それに真広、もう半年じゃなくてまだ半年だよ。』 琴音の笑顔と、心強い言葉が胸に染みる。 『うんうん、だよね、そうだよね。ごめんなさ…』 言い終える前に、それは涙声に変わった。 真広の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。 『ぉっ、な、泣くな。大丈夫か?』 『うん、ごめん、ごめんね。大丈夫。』
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