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あり得ない。けど……
俺は小鳥に向かって名前を呼んだ。
「三橋……」
と………
その瞬間、小鳥がピクッと反応した。そしてものすごい勢いで俺の方に向かって飛んできた。
そのまま直進してきて止まれなかったのか俺のオデコに小鳥は命中。失速して落下する小鳥を俺は慌ててキャッチした。
手のひらに収まる小鳥。近くで見てもやっぱり三橋の顔で。
両手の平を自分の視点まであげて小鳥をジッと見る。小鳥の姿の三橋もジッと俺を見ていた。
「…三橋なのか?本当に」
俺が聞くと小鳥三橋は小さくピッと鳴いてから俺の手のひらの中でワタワタと動き回った。いつもの挙動不審な動きをする三橋そのものだ。
俺は確信した。
これは三橋だ。本当にあり得ないことだが、実際目の前に小鳥の姿をしている三橋が居るのだ。
「阿部?なに鳥と遊んでいるんだよ!三橋が行方不明なんだぞ!」
そう言う花井に俺は手のひらの三橋を見せた。
「三橋ならここに!」
「…はぁ?鳥がどうしたんだよ」
ため息混じりの花井の言葉。どうやら花井には小鳥にしか見えないらしい。
三橋に目を向けると気付いてもらえなかったことにショックを受けてかまた泣き出していた。
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