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小鳥三橋が俺の周りを飛び回っている。
「…何で俺がっ」
三橋が嫌なわけではない。むしろ隙さえあればキスしたいと思う。あの柔らかそうな唇に触れたい。深く繋がりたい。そう思っている。
けれど先ほど目の前で行われたことが頭に残って、今そうする気になれなかった。
ピッ…ピピッ…
「阿部に迷惑…かけたくない?いいのかよっお前そのまんまかも知れないんだぞ」
元気に飛び回っていた小鳥三橋は急に元気をなくし、田島の肩にチョコンと止まった。
ピッピッピィ
俺にはなんて言っているのかわからない。けれど悲しげな鳴き声が俺の胸を締め付ける。
「阿部もいいのかよっ!三橋がこのまんまだと三橋のボールを受けられないんだぞ」
くそっ。何でこんなことになっているんだよ。人間が鳥になる?非現実的だろ。それでキスすれば元に戻るってどこのおとぎ話だよ!
小鳥三橋は少し震えながら涙を流したままだった。
俺は無言で三橋の身体をつかみそのままくちばしに口づけた。
唇の中央にくちばしの固い感触…
次第にその感触は柔らかいものへと変化して、抱えた身体も急に重みを増した。
三橋!と皆が声を出し駆け寄る気配がした。
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