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俺の腕の中に確かな重み。人の温もり。唇に触れているのはくちばしではなく唇。
触れた唇をもっと感じたくて、深い口づけを三橋に落とした。
「…おい、あっ阿部?」
「……阿部のテクニシャン」
腕の中の三橋は、クタリと気を失っていた。真っ裸で……
「しかし三橋が見つかって良かった」
花井がハハハッと笑う。どうやら三橋が鳥になったという現実から目を逸らすことにしたらしい。他の奴らも同様のようだ。
「やっぱり三橋の王子は阿部かぁ…」
田島が俺をチラリとみた。その横には真っ赤な顔して視線を彷徨わせてキョドっている三橋がいた。その三橋の視線が俺に向けられ目が合うとビクッと肩を震わせた。
そのまま目を逸らさずにいるとうひっぃというよくわからない奇声を上げて田島の後ろに隠れた。
「こらっ三橋。俺んとこくるんじゃなくて、阿部の方に行け」
田島が隠れた三橋のことを俺の前へとぐいっと押し出した。
「じゃ俺らは先に帰るから」
田島は他の部員を連れて帰っていった。
二人残された月明かりののグラウンド。
三橋は小さくなりながらビクついていた。
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