事実

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冒頭陳述の間、被告は背筋を伸ばして上を向いていた。 肩を震わせ、眼鏡を外して右腕で涙をぬぐう場面もあった。 裁判では検察官が被告が献身的な介護の末に失業等を経て、 追いつめられていく過程を供述。   殺害時の2人のやりとりや、 『母の命を奪ったが、もう一度母の子に生まれたい』 という供述も紹介。   陳述の最中に、検察官が涙で声を詰まらせるという異例の雰囲気の中で裁判は進行した。 目を赤くした裁判官が言葉を詰まらせ、刑務官も涙をこらえるようにまばたきするなど、法廷は静まり返った。           『痛ましく悲しい事件だった。 今後あなた自身は生き抜いて、絶対に自分を殺めることのないよう、母のことを祈り、母のために幸せに生きてください』           裁判官が最後にこう語りかけると           『ありがとうございました』 と頭を下げた被告。 法廷には、傍聴人と検察官、被告のすすり泣く声が響き、法廷は悲しみに包まれた。           『あなたの周りにも、困っている人はいませんか』
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