家族、分離、異種

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「和夜は、どっちが幸せだと思う?何不自由ない暮らしながらも籠の鳥になってしまって本当の『自由』がなくなった雪と、自給自足で毎日精一杯頑張って暮らしながら『自由』である私と」 春の問いに、和夜はハッとして顔をしかめた。 「……そんなの、選べるわけないだろ」 「和夜らしい答えだね」 「そう言うなら一日だけでも代わってみたらどうだ?」 「無理だよ。私と雪は双子なのにまったく顔は似てないし。何より髪の色が違いすぎる。大婆様ね嫌いみたいなんだ、私の髪の色」 春は自分の髪をちょいと掴み、毛先を見る。 雪のような漆黒ではない。枯れ葉のような茶色い髪。 「大婆様は古風な人だからな。日本人は黒髪だって決め付けてるんだ」 「私の髪、確かに明るいもんねぇ。外国の人みたい」 「見たことあるのか?」 「直接はないけど、本に書いてあった」 和夜は春の髪を見つめる。 「気にするな。太陽にあたると透ける、綺麗な色だと俺は思う」 和夜は春の頭をクシャッとすると、麻袋を担ぎ直して家へと歩いて行く。 春は頬を染めて和夜に触られた頭に、今度は自分が触れてみる。トキンと胸が小さく鳴り、春は満面の笑みになる。 毛束を掴み、太陽に透かして見ながら小さな声で言った。 「この髪の色でよかった…」 ふふ、と笑って急いで水を汲み、和夜の後を春が軽快な足取りで追いかけた。
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