家族、分離、異種

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二人は宮の最奥の一室へと向かう。 そこは雪と、雪に仕える側近の者、それと大婆様以外は入ることが許されない部屋。 黒くて大きな錠前に、輝夜丸が鍵を差し開ける。 重々しく厚い扉がキィ…っと軋む音をたてる。その扉の先には何本もの鉄格子。 鉄格子の中は広々とした部屋になっていた。ほんの小さな窓から差し込む僅かな明かりが部屋を照らしている。 その窓から差し込む明かりの下に座り込んだまま、窓を見つめるのは黄金色に輝く髪を持った少年。 「来夜くん」 雪がそう言うと、少年はゆっくり雪たちに向かって振り返った。 着古した着物から覗く白い肌。身体や顔つきは雪や輝夜丸と同じ年端に見える。 片目を覆う白い包帯。もう片方の眼は、覇気無く雪たちを捉えた。 その瞳は、血のように鮮やかな真紅色をしている。 雪はそれに臆することなく、彼に微笑みかけた。 「こんばんは、来夜くん。七日ぶりくらいだけど、体調に変化ない?」 雪の問い掛けに、しばらく雪を見つめていたが、彼は小さく頷いた。 彼は村の入口に傷つき倒れているのを村人に発見され、奇怪な容姿に『化け物だ』と罵られて、怪我の手当てもされず放置されていた。 村人たちの騒ぎを聞き付けて雪が向かい、周りの村人たちを一喝する。 <同じ赤き血を持つ者を化け物だと罵るのはやめてください。見捨てるなど、人の痛みが分からぬ者のすること。恥じるべき行為ですっ!!> そんな雪の一言にその騒ぎは収まった。 雪は彼の傷を治し、宮に彼の暮らせる部屋を用意するように命じる。 しかし時呼が彼の存在を認めず、鉄格子をつけた部屋ならということで、ようやく許しを得たのだった。 雪の問い掛けに対し、言葉にして答えたのは自分の名『来夜』ということだけで、話す事を一切しない。
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