148人が本棚に入れています
本棚に追加
弱々しい息遣いで、力無く雪が微笑んだ。
「雪…」
「少し、休んだら…大丈夫だから…」
無理に強がって見せる雪が、和夜にはとても儚いものに映った。
和夜は眉間に皺を寄せ、自分の胸に抱き寄せる。
突然の事に、雪は目を丸くした。
「かず…や…?」
雪の呼び掛けにも和夜は応えない。ただ、雪の肩を抱く手に力を込めたのみだ。
目の当たりにした、雪の『巫女』としての力。
自分とは『別格』なんだと思い知らされた気がした。
数奇な運命…何故それが雪だったのかと、和夜は胸を痛める。
「雪…」
「え、なに?」
「………辛くないか?」
その和夜の問いが、何に対してなのか、雪には分かり兼ねた。
今の体の状態のことなのか。
『巫女』であること自体がなのか。
後者に対してならば、和夜がこんな質問を雪に投げ掛けたのは初めてのことだ。
雪は答えに困りながらも、一つだけ確かなことを口にした。
「…辛くないよ。私は、独りじゃないから」
大婆様や村人達のように自分を信じる者がいる。
早夜や夜彦、輝夜丸のように自分を敬い、慕う者がいる。
大好きで、かけがえのない妹…春のように気遣って愛してくれる者がいる。
そして……心から愛して止まない者がいる。
どうして私だったのか。どうして春じゃなかったのか。
そう思うことは少なくない。
それでも…。
最初のコメントを投稿しよう!