距離、想い、妖

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弱々しい息遣いで、力無く雪が微笑んだ。 「雪…」 「少し、休んだら…大丈夫だから…」 無理に強がって見せる雪が、和夜にはとても儚いものに映った。 和夜は眉間に皺を寄せ、自分の胸に抱き寄せる。 突然の事に、雪は目を丸くした。 「かず…や…?」 雪の呼び掛けにも和夜は応えない。ただ、雪の肩を抱く手に力を込めたのみだ。 目の当たりにした、雪の『巫女』としての力。 自分とは『別格』なんだと思い知らされた気がした。 数奇な運命…何故それが雪だったのかと、和夜は胸を痛める。 「雪…」 「え、なに?」 「………辛くないか?」 その和夜の問いが、何に対してなのか、雪には分かり兼ねた。 今の体の状態のことなのか。 『巫女』であること自体がなのか。 後者に対してならば、和夜がこんな質問を雪に投げ掛けたのは初めてのことだ。 雪は答えに困りながらも、一つだけ確かなことを口にした。 「…辛くないよ。私は、独りじゃないから」 大婆様や村人達のように自分を信じる者がいる。 早夜や夜彦、輝夜丸のように自分を敬い、慕う者がいる。 大好きで、かけがえのない妹…春のように気遣って愛してくれる者がいる。 そして……心から愛して止まない者がいる。 どうして私だったのか。どうして春じゃなかったのか。 そう思うことは少なくない。 それでも…。
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