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辺りに含み笑いの声が響いて、サクッと残雪を踏み締める音がした。その方向に眼光を向ける。
「流石、だな。私の気配を感じる人間は珍しい。それが『シャーマン』というものか」
どこからともなく現れたのは、純白の髪と肌を持ち、黄金色の瞳をした、一人の男だった。
髪は膝より下まであり、後ろ髪と同じ長さの分けられた前髪から見える顔は、人間離れした美しさを備えている。
黄金色の満月のような瞳に違和感はない。
こんなに美しい妖がいるのかと、雪が思わず感じてしまうほどに。
「シャーマン…と言う方もいるでしょうね。巫女の呼び方は様々だと聞いたことがあります」
雪は落ち着いた口調で対応した。その様子に「ほぅ」と妖が感心するような声を口にする。
「私の姿を見て尚、動揺を見せたのは一瞬か。小娘ながらに手強いと見える」
「それは褒めてるんでしょうね。嬉しくはないですが」
「シャーマン…巫女とはそんなに気丈なものなのか?あと、その溢れ流れる霊力」
ニヤッと妖が微笑む。
「私は村より出たことがありませんので、他の巫女がどのようなものか知りません。…私の力を嗅ぎ付けて来たか、吸血鬼」
「私の存在を知っていたか」
「私には居住地を持たない友がおります」
「くくっ…それは『人』ではないな。それを友と呼ぶか、愉快だ。愉快な巫女よ、名を何と言う?」
「妖ごときに名乗る名はありません。村の一人を喰い物にするような妖などに…ッ!!」
雪は立ち上がり、身体から光りを帯びた煙を立ち上ぼられる。
「即刻、この村より手を引いて。此処はあなたのような存在があっていい場所ではないんだ」
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