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双子というのに、全く正反対の二人には、更に大きく違う点があった。
三人が村へと戻ると、村の入口には一人の老婆が立っていた。
すっかり曲がった背中で、身体はやけに小さく感じる。綺麗に白く染まった髪。それを後ろで丸くまとめて、額には赤い紐を巻き付けている。
そして片手には自分の頭の位置より高い、白樺の杖を持っている。
春が小さく「あっちゃ~…」と呟き、片手で顔を覆う。老婆の顔に深く刻まれた皺から、怒りが感じ取れたからだ。
老婆は杖を、ガンッと強く地面に突き立てる。
「雪巫女様っ!!また宮を抜け出して…!!」
「すみません…」
老婆の言葉に反抗することなく、雪は素直に謝罪し俯いた。
「あなた様はこの飛暮村では『要』となる方、何かあったらどうなさるおつもりか!?」
老婆の目が、キッと雪から春に向けられる。
「春巫女!!お前が連れ出してしまうから雪巫女様が…!!」
「春は何も悪くないっ!!私の独断です!!」
「それでも連れ出したのは春巫女のはず」
老婆の言葉に、雪の顔は鋭いものになる。
「いい加減になさい。春は関係ありません。それより大婆様、『和夜』が戻るように言ってくれました。春を責めるより、和夜に礼を」
「和夜が…?」老婆は青年に視線を移す。青年は少し緊張した面持ちで頭を下げる。
「さすがは和夜よ。雪巫女様を想っておる心意気、感謝するぞ」
「いえ…恐れ入ります」
「ささっ、雪巫女様。宮に入られませ。お風邪などになられては、この婆は…」
「大丈夫です、分かってますから。春、和夜、ありがとう」
雪は申し訳なさそうに笑うと、老婆の後ろをついて行く。
春は雪の去り行く背中を、眉を寄せて見送る。
「寒そう…雪」
ボソッと呟いた春の言葉に、青年は応える。
「寒いわけないだろ。少なくとも俺たちの家より温かくしてるはずだし」
「違うよ、気温の問題じゃなくて…心の話」
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