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―――………
宮の裏手で作業をしていた輝夜丸は、誰かの気配を感じ取り、作業の手を止めた。
「誰だ」
身構えた輝夜丸の前に、静かに草野を分けて現れたのは和夜だった。
その人物の登場に、輝夜丸の顔色が変わる。
「何故お前がここに…雪巫女様は!?」
「清子を見つけた。村に運ぶのに助けがいる」
「貴様…ッ、雪巫女様一人を置いて来たと言うのか!?」
掴み掛かる輝夜丸とは対照的に、乱れた呼吸を整えながら、和夜は冷静さを保つ。
「雪の『命令』だ。それに、お前なら助けになってくれる筈だと言ったのは雪だ」
「えっ…」
「俺だって一人にすることを、快く思っているわけないだろ。啀み合う前に、一刻も早く戻りたいんだ」
輝夜丸は、一瞬躊躇するも、和夜の胸ぐらから手を離す。
「大婆様に見つかってしまう前に…居場所はどこだ」
「俺について来てくれ。…俺を嫌ってるのにすまないが」
「今は、それよりも雪巫女様を優先するだけだ」
きつく和夜に言い、輝夜丸は睨む。和夜も眉間に皺を寄せて、輝夜丸を見る。
先に和夜が視線を逸し、来た方に向かって足を向ける。輝夜丸も、その後ろに続いた。
そんな二人のやり取りを偶然聞いてしまった早夜は、意を決して二人の後を追っていく。
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