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「そのような…っ、身寄のない私を『御付き』にしていただき、名付けまで…!!癒していただいただけではございません!!」
「ふふ、ありがとう」
雪は輝夜丸の頬に優しく触れる。輝夜丸の心臓は高鳴った。
「『星が輝く夜に』あなたを見つけたから『輝夜丸』と付けた…もう三年経つけど、違和感はない?」
「このような美しい名は、私には勿体ないと…ですが、大変気に入っております。ご存知のように、私には雪巫女様と出会う前の記憶がありません。この三年が、私にとっての総て」
「あなたは美しいのよ?記憶を失っている分、世俗の醜さを知らずに清らかなまま。その透き通るような肌と同じね」
雪に微笑みかけられ、輝夜丸は頬を微かに染める。
「有り難きお言葉…」
「そんな堅苦しい言葉、使わなくてもいいのに」
「雪巫女様に対する敬意ですので」
「真面目なんだから」
クスクスと笑う雪に、輝夜丸は恥ずかしそうに俯いた。
その時、雪がふと何かに気付く。
「…輝夜丸、今日はたくさん話せてよかった。また私の話し相手になってくれる?」
「私などでよければ、雪巫女様の望むままに」
「ありがとう。湯船にはすぐ向かうから、先に行っててもらっていい?」
「かしこまりました」
輝夜丸は頭を深く下げると、廊下へと戻り襖を閉める。
輝夜丸の足音が遠のいたのを聞いて、雪は口許を緩めた。
「…いるんでしょ?『阿婪』」
雪がそう言うと、誰もいないはずの室内に、突如着物を着た遊女のような、妖艶な雰囲気を纏った女が現れる。
「やっぱりあなたには分かっちゃうのね、雪」
「これでも巫女だからね。『人間ではない者』の気配には敏感みたいなの。特に『神のような存在』のあなたはね」
「神…ってのは言い過ぎじゃない?」
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