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藤森くんと付き合い始めて、早1週間が経った。 当たり前かもしれないけど、わたしの心境と同じく、わたしを取り囲んでいた周囲の環境もほんの少し変わった気がする。 まず、学校内で知らない女の子に睨まれる回数が急増した。 さすがに今の所は、漫画みたいに体育館裏に呼び出されてリンチをされたりとかはないけれど……。 それでもやっぱり、決して面白いものではないんだろう。 当たり前だ。だってわたしは特別可愛いわけでも優しいわけでもない、他人に自慢できる特技があるわけでもない。 「何であんな子が?」って、陰で囁く人がいても仕方ないと思う。 悲しいし、虚しかったりもするけれど、わたしは自分から“藤森くんの彼女役”を降りたりなんて、多分できない。ううん、絶っ対、できない。 だって、藤森くんが――。 「大好きだからーっ!」 「うん、俺もだよ、江夏さん」 「……うええ!?」 妄想の果て飛び出してしまった独り言に、返事があった。 かなり驚いて振り返ると、すぐ後ろに、王子スマイルを張り付けた藤森くん。ちなみに今の「俺も」は、もちろん周りに見せつけるため。 相変わらず神出鬼没で、わたしに気付かれず背後に立つのが上手い。 たまに思う。何者ですかあなたは。
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