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「雨、続くねえ……」 すぐ隣で、どこか残念そうに江夏さんが呟いた。 今朝からずっと、見かけるたびに窓の外を気にしている。 ニュースでは既に梅雨明けを告げたというのに、来る日も来る日も雨、雨、雨。 「梅雨明けはしてるみたいだから、きっと明日辺りには晴れるんじゃない?」 「……でも、今日は七夕なのになー」 その言葉で、今日が7月7日だったことに気付く。でも別に、七夕が晴れようが雨が降ろうが実際の所俺には関係ない。 だけど隣で窓の外を伺う彼女には、そうでもないみたいだ。 「わたし、まだ1回も七夕の日に天の川って見れたことないんだよね」 「――え? 何? あま……ぶっ、クッ……ふははっ」 「……ええと、藤森くん、今笑った? なんで?」 彼女の発言に、思わず噴き出してしまった。江夏さんはそんな反応に納得いかないようで、不思議そうに首を傾げている。 だって“七夕の夜に天の川”なんて。 「だって、乙女チックというか何て言うか……天の川なんて、見れるわけないよ」 「……へ?」 毎年、7月7日の夜、空を見上げて天の川を探していたのだろうか。 そう思うと、申し訳ないけど笑いが止まらない。 だけど笑い続ける俺を、彼女は意味がわからないと言わんばかりに、訝しい表情で眺めている。
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