「夢泥棒」――1,アキラの今

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それは、とっても素敵な夢だった。 暗い夜闇の中、私はだだっ広い崖の上に立っている。 後ろはうっそうと茂る林。 祭りが盛り上がってきているのか、遠くでお囃子の音が鳴り響く。 ぼんやりと灯る提灯の光、にぎやかな人の声も、私にはどこか隔壁された状況のように思えた。 すぐ傍を茶色い固まりが駆け抜けていって、私はびくりと身を震わせる。 でも、すぐその正体に気づいてほっとした。 タヌキだ。 ここは田舎町、野生のタヌキが居ても何もおかしくない。 「お前も星を見に来たの?」 そう問いかけながら手を差し伸べると、 タヌキは身を翻して茂みの中に隠れてしまった。 辺りに響いていた虫の音が一瞬止み、また何事もなかったかのように鳴りだす。 「野生動物は警戒心が強いんだ、 近づけば逃げちゃうよ」 笑い混じりの聞き慣れた声に、私はむぅっと頬を膨らます。 「あの子がひょっとして星を見に来たんなら、 一緒に見たいなって思っただけよ。 星好きに種族の壁はない!」 「それじゃあ星好きさん、辺りを見回してないでこっちも手伝ってくれない? ……と、出来たかな」
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