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それは、とっても素敵な夢だった。
暗い夜闇の中、私はだだっ広い崖の上に立っている。
後ろはうっそうと茂る林。
祭りが盛り上がってきているのか、遠くでお囃子の音が鳴り響く。
ぼんやりと灯る提灯の光、にぎやかな人の声も、私にはどこか隔壁された状況のように思えた。
すぐ傍を茶色い固まりが駆け抜けていって、私はびくりと身を震わせる。
でも、すぐその正体に気づいてほっとした。
タヌキだ。
ここは田舎町、野生のタヌキが居ても何もおかしくない。
「お前も星を見に来たの?」
そう問いかけながら手を差し伸べると、
タヌキは身を翻して茂みの中に隠れてしまった。
辺りに響いていた虫の音が一瞬止み、また何事もなかったかのように鳴りだす。
「野生動物は警戒心が強いんだ、
近づけば逃げちゃうよ」
笑い混じりの聞き慣れた声に、私はむぅっと頬を膨らます。
「あの子がひょっとして星を見に来たんなら、
一緒に見たいなって思っただけよ。
星好きに種族の壁はない!」
「それじゃあ星好きさん、辺りを見回してないでこっちも手伝ってくれない?
……と、出来たかな」
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