2208人が本棚に入れています
本棚に追加
/210ページ
「結婚かぁ…。」
冷蔵庫から取り出してきた缶ビールをプシュッといい音をさせて開けながらユカは昼間のルリの話を思い出していた。
ソファーに座り一口飲むとようやく家に帰ってきたのだと落ち着く気がする。
「結婚かぁ…。」
再度同じ言葉を呟いてみる。
自分には全く現実味のない言葉だけれど、ルリは今まさに直面している。
ユカ自身も結婚に憧れを抱いていたこともある。
二十歳くらいまでは
『23歳くらいには結婚して可愛い子供も1人はほしい』
と考えていたりもした。
けれど、今まで付き合ってきた男たちを生涯の相手と思ったことは正直なかった。
中には将来を誓いあった人もいるが、その彼は女は結婚したら仕事なんてしないで家庭に入るモノだと考えていた。
ユカはそうは思わない。
むしろ2人で働いていた方がお互いゆとりが出来て楽なのではないかと思うのだ。
そして何より、ユカもルリも今が充実し過ぎていることが問題だった。
待遇の良い会社に責任ある仕事、それに見合った給料…
好きな時に友達と飲みに行けて欲しい物も好きに買える。
結婚となるとそれらは少しづつ確実に自由には出来なくなるのは分かっている。さらに子供が出来たら尚更だ。
周りの早くに結婚した友達の話などを聞いてきたこの年頃の女にとって結婚とは
=幸せ
ではなく
=苦労と忍耐と少しの幸せ
という現実的なモノなのだ。
ルリが、今更…といってしまうのも分からないでもない。
最初のコメントを投稿しよう!