カルマナ

3/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
‡†‡†‡†‡†‡†‡   「う…ぁ。あぁ?」 数刻後、少年は目覚めた。圧倒的な闇の中それだけが浮き出ているかのような巨体の傍らで。何一つ不自由のない身体に戻ったことを確認した少年は、されどまだそのことにすら気付ける余裕もなくただ呆然と巨大な発光体を見上げているだけだった。 「起きられたか旧き友よ。」 不思議な響きを持つ声だった。耳から伝わったというよりは体に直に刻まれるような、どこか心の深いところで聞かされているかのようなそんな声。 「流石に早きものよ。起きていきなりで不躾ではあるが、まずは用件を伝えられたし」 ハッと、少年は我に返った。ひどく現実離れした光景に忘我していたが確かに、自分はここにワケがあって来ているのだ。…いや少し意味合いが違う。「捧げられた」のだ。 「なぜ、僕はまだ息をしているのですか?僭越ながら始祖の神聖6龍その弍の爪、風を司る者カルマナ様では?古の盟約により我らエルフの民は御身に人身御供を捧げこの地を護る誓いをたて、貴方様の御力をお貸しいただくよう儀式をしました。外ではまだ仲間が御身のお姿を見るまで儀式を続けていることでしょう。なのに、何故?」 言い終わらぬうちにその問い掛けに応じたように銀色の塊が形を変え始めた。ただの無骨な岩とも見えたところから、神話の中の皆が思い浮かべる神獣のソレへと。 「風に愛されし民の子よ。我はそのような契約を交わした覚えなどない。」 龍は語る。 8千年の時を経た、今は誰も知ることない語られぬ昔話を。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!