短編

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「君の両目は不思議だね」 「どうして?」 「だって、たくさん水が流れていくんだもん。ボクの目から水は出ないのに」 温かみの一切ない手が、温かく濡れた頬に触れた。 「君のほっぺは不思議だね」 「どうして?」 「だって、こんなに柔らかいんだもん。ボクのほっぺはカチカチだ」 もう一方の手で、柔らかさのまるでない、ひんやり冷たい頬に触れる。 「君の胸は不思議だね」 「どうして?」 「トクントクンって大きな音が聞こえるんだもん」 少女の胸の中に飛び込んで、耳をピタリと胸の中心に当ててその音に聞き入る。
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