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「敵襲だー!!」
おぉォオー!!!!
敵味方数百、数千の男たちの唸り声が木々を震わせた。
と同時に降り注ぐ無数の矢。
その数から、こちらが圧倒的劣勢であることは明白である。
友枝は矢を剣で跳ね退けて馬を走らせる、女の腕の中にいた。
その群を抜く見事な動きと武具の荘厳さ。
ただ者ではない。
敵も何かを感じ取ったようで、開始からさほど経たぬうちに女武者の所に矢の集中業火が浴びせらた。
「トモエさま!」
そう言って友枝と女の前に立ち、矢を浴びて倒れる若い男がいた。
落馬する直前に振り返った視線から、友枝の名を呼んだ訳ではないことは明らかだ。
血を吐きながらも微笑む男の目は、静かに閉じられた。
動かない男の体が固い地面に叩きつけられ、周りの音に紛れ僅かに拾える程の鈍い音がした。
顔色を変えず、ただ唇に血を滲ませる女武者。
矢の来る先を見据えて剣を降る女の横顔は、悲しかった。
次々と周りの兵たちが崩れ落ちてゆく。
友枝は心の中で声にならぬ悲鳴を上げた。
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