華火

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「ねぇ知ってる?」 蝉が煩わしく鳴くある夏の日。 縁側で一人ぼーっとしていたら突然現れた姉が言った。 彼女はムリヤリ結んだと見られる三つ編みをさげ、私の隣に座った。 「何が?」 と尋ねると姉は指を差して私に空を仰がせた。 「夏にね、花火があがるのは死者への弔いなんだよ」 「へぇ…」 「お盆で戻ってきた死んじゃった人たちを花火でお見送りするんだよ。そのお花がお空の上まで届くように」 「そうなんだ…」 姉と共に空を見上げてたら首が痛くなってきた。 しょうがないので首を降ろす。 姉は少女の顔で笑った。 「しーちゃんってば弱いわね。あたしより若いのに」 私も少女のような顔で笑ってみせた。 「そうね」 ゴホッゴホッ 笑い過ぎたのか咳き込んでしまった。 姉はまだ笑う。 「しーちゃん、おばあちゃんみたい。きっと年取ったらしーちゃんはお祖母ちゃんみたいにずーっと寝てるんだよ」 祖母は私たちが小さい時から寝たきりの生活だった。 昔から体の弱い人だったと母は言っていた。 「…そうだね」 そういうと姉は立ち上がり私を手招きした。 「かけっこしよ!しーちゃんはあたしが強くしてあげる」 伸ばされた手。
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