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「うじうじすんなって! 時間無いんだし乗りなってば! 」
巫女は綺麗に塗られた紅い唇を豪快に開いて二人に呼びかけた。
「てか、さ。
今立ち止まっても意味無いよ?
逃げるなら中途半端に逃げるなよ」
マスカラを塗った長い睫毛に大きな瞳。
上品な紫色のアイシャドーは色気を漂わせた、優しそうな美しい女性。
けれど、豪快に大口で笑い、二人を乱暴に引き寄せた。
「私達と一緒に、答えを見つけるまで逃げようよ? 」
緊張を解してくれるかの様に二人の頭をクシャクシャに撫でた。
巫女も緊張しているのに関わらず、二人に優しくしてくれていた。
「じゃあ、出発ですね」
みのりが幸せそうに微笑み、乗り込もうと車のドアを開けた。
「――待ちなさい。誘拐犯!! 」
追いついた男は、みのりを厳しい眼差しで睨みつける。
「誘拐犯って…
お父さん……」
「お前がお父さんと呼ぶな!! 」
男は、巫女の父親であるらしかった。
スーツを乱し、髪を乱暴に掻きながら男は言った。
「――この結婚式にお前が間に合えば、きちんと儂は認めてやるつもりだった」
男は眉を寄せ皺を深くする。
「なのに貴様は――!!」
男は、流全と彼方の二人を見た。その顔は真っ青だった。
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