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「名張(ナバリ)社長、例のプロジェクトの大まかな準備が整ったとの報告がありました」
だだっ広い部屋に男の声が響く。
そして部屋の一番奥にある回転式の椅子が回り、もう一人の男が姿を現した。
その男はにんまりと笑い、それからゆっくりと口を開く。
「そうか、ついに完成したか。この五年間、ずっとこの日を待ちわびたよ。神谷(カミヤ)君、君もよくやってくれた」
「いえ、私は社長の命令に忠実に従ってきただけでございます」
神谷と呼ばれた秘書は抑揚のない声で答える。
「君の忠誠心には期待しているよ。何しろ君に働いてもらいたいのはこれからだからね」
「承知しております」
神谷のその返事を聞き、満足げに頷いた名張は、急に無表情になり神谷を見据えた。
その瞳は、どす黒く濁っているように見える。
「神谷君、起動検査はまだかね?」
「後、半時ほどお待ち下さい。では、私は失礼します」
バタン―……
神谷が部屋の外へ出たことで、部屋の中は静寂に包まれた。
――しばらくしてから名張は
「フフフ、起動が楽しみで仕方がないよ。ククク、クハハハハハハハ!!!!」
狂ったように笑い始めた。
その様子は、これから始まる惨劇を物語っているようだった。
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