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沈黙の空間を壊すように、女子高生達が楽しそうにおしゃべりしながら店に入ってきた。
「変な話をしてすみません。気にしないで下さいね。ごゆっくり」
そう言って、御手洗さんはスマートに笑ってみせた。
そして、小走りでお客さんの接客に移る。
「…まーた、あんたの勘が的中しちゃったね」
「うん…」
アイスを口に含む。
ひんやりとした感覚が、さっきとは違い、やけに気分を重くさせた。
「ま、あたし達には関係無い事だろうけど、八川達には言っとくべきだね」
溶けた甘酸っぱい汁をかき集めてすくい、里沙の皿が空になった。
里沙は待たせるとうるさい。
私も、急いで残りをかき込んだ。
「行こっ!そろそろ帰らないと暗くなっちゃうよ」
不安だからこそ、わざと元気に振る舞った。
「そうだね、帰ろっか!」
私はお冷やをもう一杯ついで、流し込んだ。
口の中に残るアイスの甘ったるさを洗い流すのと同じように、この胸騒ぎも流すために。
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