夢の現実は奇なり

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真夜中の線路を全力疾走していた俺は、恐ろしく長い階段を勢い良く駆け降りていた。最上階には外を覗ける穴があって、そこから見える景色はまるで学校だった。来たことがある様な気がするが、巨大な赤玉に追われながら見回す研究室はどうやら見たことがないらしい。手に持ったスケッチブックには女性の絵が描かれているし、俺の目の前には絵と同じ顔をした首がある。首を渡され千円と言われて絵を差し出すと、店の奴はニコリと笑って俺を椅子に座らせた。ポケットにあった魔法の杖は古びていて、立っている床は油まみれだった。飾ってある絵は素人っぽくて、売り物は胡散臭い。線路を抜けた二階建ての建物は森にあって、その中は餓鬼で溢れていた。太いパイプの並びは俺を困惑させ、走り抜けた図書室は俺を深い休息へと誘う。冬の日に見た薄紅色のサクラが、夏の日差しに照らされて落ち葉の絨毯に佇んでいる。
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