序章

2/6
前へ
/6ページ
次へ
 その日の朝も、それまでの航海と変わらず平穏であった。厳密に言えば、宇宙空間を航行中の艦のブリッジでは、朝と夜で何か変化があるわけではないのだが、その時たしかに艦内時間では朝となっていたので朝なのである。メガロード級移民船団司令を兼ねるメガロード6艦長は、いつも通りの朝に満足していた。移民船団の護衛艦隊勤務から順調に昇進を重ねてきた生え抜きで、規則正しく教本通りに並んだ護衛艦隊の布陣も、彼の几帳面な性格を表していた。  彼が当直先任士官からの引き継ぎを受けていたその時、その異変に最初に気付いたのは船団最前方から更に前方に展開していた、早期警戒艦のうちの一艦のオペレーターだった。早期警戒駆逐艦グリコ32レーダーが、索敵圏内にフォールドアウトしてくる物体を捉えたのである。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加