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-ピチョン…ピチョン…-
何か冷たいものが頬を伝う感覚で目が覚めた
『…ん………ここ…は…』
どうやらまだ生きてるみたいだ
『…っ!?』
起き上がろうとしたはずみで頭が疼く。
落ちたときに頭をぶつけたのだろうか…
頭を触ると包帯がまかれていた…
『…えっ?』
そういえば体の至る所が手当されていた…
辺りを見渡すと一つの人影があった。
『…キメラ…?』
『歩けるようになったらでていけ。二度とここに来るな…』
そういい残しキメラの男は立ち去った。
『でてけって……僕にはもう帰るところなんて…』
それから10日間居座ってやった。
何も飲まず食わずで衰弱した頃、恨めしそうに睨めつけながらキメラの男がやって来た。
『何故まだここに居る…帰れといった。もう歩けるはずだ…』
『僕には…帰るところなんて…ない……キメラの贄になるために来たんだもん…。死んでもここに居る。』
チッと舌打ちしたあとキメラは衰弱した僕を抱え、住家へと連れていってくれた…
『ねぇ…どうしてここに連れて来てくれたの?』
『………』
さっきからこの繰り返し。
キメラの住家であろう洞窟に連れ、薬湯を飲ませてくれた。
それからはこの成り立たない会話の繰り返し。
『ねぇ、答えてよキメラ!!』
『ウェイディー。』
初めて言葉を返してくれたが会話にならない。
『…え?』
『ウェイディー。キメラと呼ぶな。』
どうやらキメラという呼び方に不満があったようだ……
『人間は嫌いだ…関わりたくもない。
だが、あそこでお前に野垂れ死にをされたらまた余計な噂が流れて俺を狙う人間が増える。関わりたくもない人間と関わるのなら最小限に留めるべきだと思ったし、テリトリーで死体が出るのはごめんだ』
『…ぁ…』
何も言えなかった。
本当に人間を怨んでいる目をしたから…そして寂しさの篭った目をしたから…
『帰れないならここにいればいい。ただし、必要最低限しか関わらない。自分の身は自分で何とかしろ。それが守れるのなら好きなだけいればいい』
どうやら置いてくれるらしい
『…ありがとう、ウェイディー!約束するよ!!』
その言葉を聞いたウェイディーはまた姿を消した…
少しのあいだ過ごせるだけの食料を残して……
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