月下香

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男はサラリーマンだった。平凡な能力で出世は遠いはずだったが、たまたま上司の娘に見初められそれなりの地位を手に入れた。 娘が産まれた機会に家も建て、恵まれていたはずだったが、男は疲れていた。 有能な部下と反抗期の娘、妻の明らかな浮気。 家庭でも会社でも安らげる所のない男は、帰り道の公園のベンチで缶ビールを片手に淀んだ空を見上げるのが日課だった。
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