雪の日に。

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      僕らは旅行に来ていた。 僕も含め、高校時代の仲間8人。 道の悪さから客の少ないマイナーなスキー場ではあるが、正に隠れ穴場なのだ。 僕のビデオカメラには、前を歩く7人が写っている。     学年イチの美女、雛川 愛子。 ボーイッシュな桜井 敦美。 短気なリーダー三島 和之。 ムードメーカー伊崎 勇。 オカルト大好き田中 祐太郎。 生徒会長一ノ瀬 幸喜。 バスケ部部長七瀬 貴一。     「ねぇ、本当にこっちなの?」   不安そうに全員を見回しながら、雛川が聞いた。 だが、そんな事など誰も知るワケがない。   「右にそれただけだから、左に行けば戻れるって。」   雛川をなだめるように、伊崎。その声は明るく、ゴーグルの上からでもその明るい表情が伝わってくる。   「ヤバくないッスかぁ?吹雪いてきたッスよ、どうするんッスか。」   伊崎の言葉を打ち消すように、田中が言った。 田中もまた、不安そうに辺りを見回している。   「うるせぇな!帰り道探すしかねぇだろうが!」   怒鳴るのは三島。 イライラしているのか、今にも田中に掴みかかりそうな勢いだ。     僕はため息をついた。 辺りは吹雪き、あまり離れるとお互いの姿も見えなくなる。 僕たちは、スキー場から帰る道の途中に車がガス欠で動かなくなり、ホテルまで帰ると決意して歩き出して遭難したのだ。 個人の持ち物はたかが知れている。マシなものといえば、SUV車に付属している短いスコップくらいか。 ほとんど食料もない。 。 道に迷った今、このままではみんな死んでしまう。   なら。   荷物に入れておいたビデオカメラを見て決意した。 僕は、僕たちがいた証を、残そうと思った。 少なくとも、僕が死ぬまで、みんなをこのビデオで記録しようと。
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