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僕たちは歩き続けた。
ビデオカメラに映るのは、絶望的なまでの白と、着いては離れて歩く、7人の影。
絶望感からの無言が続く。
ただひたすら、吹雪のなかをアテもなくさまよう。
「畜生…勘弁してくれよ…。もう1時間だぜ?携帯も通じない、何も見えない…どうしてくれるんだよ…。」
立ち止まり、泣きそうな声で、一ノ瀬が言った。
皆も立ち止まり、いたたまれない表情で一ノ瀬を見ている。
そんな中、三島がいち早く詰め寄り、胸倉に掴みかかった。
「うるせぇよ、一ノ瀬!!下ってりゃいつか着くって言ってんだろうが!!黙って歩け!!」
「ちょっと、やめなよ和之!一ノ瀬も。アタシ達、助かるよ、絶対!」
桜井が三島を止めに入る。
他のみんなは、無言で見ているだけだった。
無理もない。
歩き通しでみんな、疲れきっている。
「チッ…さっさと下りようぜ。」
三島が突き放すように一ノ瀬を放す。
顔を背ける一ノ瀬に、桜井が心配そうに声をかけている。
ややあって、僕たちはまた、歩き始めた。
ざくざくという足音、ごうごうと吹雪く雪。
その狭間で時々、誰かの『寒い』という呟きが聞こえてきた。
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