雪の日に。

5/7
前へ
/30ページ
次へ
    「幸喜!やめろ、死ぬぞ!」     「一ノ瀬!」     みんなの叫び声が交錯する。 七瀬や三島たちが一ノ瀬を止めようとするが、それさえ振りほどく。 普段の一ノ瀬からは考えられないほどの力だ。     「何でだ…全部脱いだのにまだ暑い…」     どうすることも出来ずに立ち尽くす三島たちと、あまりの出来事に怯える雛川たちを尻目に、一ノ瀬は焦点の合わない目で、ふらふらと歩きだし、遠退いていく。     「幸喜!幸喜、待ちなって!」     無言で見ているしかなかった僕らの沈黙を破ったのは、桜井だった。 遠退いていく一ノ瀬に追い縋るように駆け出す。     「馬鹿!駄目だ!」     あまりの事に動けず、ただ見ているしか出来なかった僕たち。 そんななか、誰かの手が、桜井の腕を掴んだ。 はっとして見ると、伊崎だった。 桜井がキッと睨み付ける。     「止めないでよ!幸喜が、幸喜が…!」     「あいつはもう駄目だ!桜井も見ただろ!?あいつ、イカレちまってる!それに、桜井まで死んじまう!」     必死に説得しようとする伊崎 。 手を振りほどこうと抵抗する桜井。 だが、二人が揉めている間に、一ノ瀬は雪に消えた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加